「モンシロチョウ」
雑草ばかりが生えた広い庭を、縁側に座ってぼうっと眺めていた。少し前までは丁寧に庭を整えて、色とりどりの花を育てていたのに今は見る影もない。あなたが綺麗だと言っていた蝶たちも花がなくなってからは姿を見せなくなった。
ふと、どこからともなく小さなモンシロチョウ蝶が飛んできた。甘い蜜などどこにもないというのに迷い込んだのだろうか。そう思いながら目で追っていると、蝶は庭を見渡すように飛び回った後、私の指に止まった。
「——あ」
その瞬間、あなたの気配がして、匂いがして、姿が浮かんできた。
何度か羽を動かして蝶は再び空へと飛び立つ。そっと追いかけるように手を伸ばすが、もう届かない。
「さようなら」
あのモンシロチョウはきっと、あなただったのだろう。落ち込む私を見かねて会いにきてくれたのだろう。
これが私の都合のいい考えだったとしても。
5/10/2026, 2:10:09 PM