【真夏の記憶】
フラフラするほど日差しが強い日
俺は海に入り、友達と三人で水を掛け合っていた
はしゃいで騒いで笑っていたら
そのうち頭がクラっとして
やばい、と思った瞬間に水の中へ倒れていた
海の水を飲みながら踠いていたが
友達はふざけていると思ったようで
助けには来なかった
それからしばらくして
友達が俺を呼ぶ声が聞こえてきた
けれど俺は海の水と一体化したような感覚になり
声を出せず体も動かなかった
そのあとの記憶はない
今の俺は、海そのものになったのかもしれない
夏になると、俺の中には
家族連れや仲間同士で遊びに来た人が入ってくる
そして毎年、海には入らず砂浜までやってくる二人がいる
俺の友達だ
目を閉じ、静かに手を合わせて
思い出話を少ししてから帰っていく
二人と海で遊んだあの日は
本当に楽しかったな
苦しかったことは
不思議と全然覚えてないな
今日も真夏の記憶を懐かしく思い返す
白髪頭で腰の曲がった二人の背中を見送りながら
俺は穏やかな波を起こし
さよならを波音で奏でた
8/12/2025, 10:47:01 AM