「夢と現実」
夢と現実は区別するのが難しい。
現実世界にいる時は絶対にありえない事も、夢の世界では有り得る事になる。
午後8時、疲れきった体をベッドに投げる。
髪が崩れる事なんてお構い無しにグリグリと顔をベッドに擦り付けてから、目元まで布団をかける。
これが、彼と出会うまでのいつものルーティンだ。
目を閉じてしまえば、簡単に意識は飛んでしまう。
彼女は刻刻と眠りに落ちた。
アラームの音で目が覚める。
おはよう、と隣から声がかかった。
「おはよう!椿くん」
「椿」それが彼の名前だ。
「あぁ、おはよう。もうご飯は作ってあるから一緒に食べようか。」
「うん!」
落ち着いていて、いつも冷静。穏やかな彼に私はいつしか恋をしていた。
ズキッと頭を殴られたような頭痛がする。
疲れてたのかな、そう思いながら寝室を出ていく彼の後をついて行った。
「君の好きな、鮭を焼いたから好きなだけ食べよう」
「本当?ありがとう」
私の好みもきちんと把握してくれている。
本当に幸せだ。
だが、そんな幸せも数時間経てば消えてしまう。
彼は必ず決まった時間に帰ってしまう。
寂しいが、彼の決めた事に抗う気は無い。
彼を見送った後にまた眠りについた。
そうすれば、また鬱陶しい仕事が始まる。
なんで夢なのにこんな仕事しなきゃいけないんだ。
心の中で愚痴を吐く。
また眠りに落ちる。彼に会う。
ぎゅっと抱き締めながら彼は言った。
「早く堕ちちゃえばいいのに。」
もう僕がいる方が現実でしょ?
夢と現実。もうどちらが現実かなんて彼女には分からない。もう目覚めることの無い深い眠りへと堕ちていく彼女は幸せそうに笑っていた。
12/4/2023, 1:53:43 PM