『子供のままで』
「いつまでも子供のままではいられないわ」
彼女は涙を零しながら、そう言った。
「そうだね、誰しも皆いつか大人になるね」
「そうでしょう?」
私は彼女の涙を優しく拭う。
彼女は最近ずっとそうやって大人になりたがる。
「でもそれは今じゃないんだよ」
「どうしてっ……!」
その言葉に彼女はまた顔を歪めて、ポロポロと大粒の涙を零した。
私は小さくため息をつきながら考える。
どうしたら彼女が納得してくれるのかを。
「君はまだまだ子供でいいんだよ」
「お待たせしましたニャン」
そこへ猫型ロボットが彼女の注文したお子様ランチを運んできた。
彼女はそれに瞳をキラキラさせている。
涙はいつの間にかとまったようだ。
「さあ、めしあがれ」
「いただきます!」
そこにはもう大人になりたがる彼女はおらず、お子様ランチに瞳を輝かせる3歳の小さな女の子だけがいた。
5/13/2024, 5:12:07 AM