中宮雷火

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【金木犀】

昨日、友達と他愛もない話をしながら帰った。
流行りの曲とか、明日の授業のこととか。
やがて分かれ道になり、私達は手を振って別れた。
「じゃあねー」と言って手を振って去っていく友達を見送りながら、
私は去年のことを思い返していた。

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去年の今頃、私は別の友達と帰っていた。
今の友達と同じく、とても明るい子だった。
ちょうど受験期だから、話題はいつも受験のことだった。

「金木犀の匂いがする」

そういえば、いつもそんなことを言っていた。
好きな匂い、と。
秋風が冷たく当たる午後5時、友達との時間はいつも温かいものだった。

晴れて受験に合格した後も、私達の交流は続いた。
一緒に帰ることは無くなったものの、一緒にいる時間は長かった。

しかし、いつしか友達に嫌われてしまい、
話す機会も無くなってしまった。
私の言動が悪かったのかもしれない。
あるいは、もっと他に理由があるのかもしれない。
私の知らないところで、第三者が絡む事情があるのかもしれない。

私達の仲は冷めきってしまった。
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友達と別れた後、しばらく一本道を進んだ。
冷たい秋風がビュウッと吹いて、甘い匂いが辺りに立ち込めた。
あ、金木犀。

「金木犀の匂いがする」

そう君は言っていた。
あの言葉から1年後、まさかこんなことになっているなんて。
1年前の私がこの事を知れば、きっと泣いてしまうだろうな。
1年後、私の隣にいるのは誰なんだろうね。

11/14/2024, 11:25:20 AM