あひる

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お題「お金より大事なもの」



空は暗く、一点の光さえ通さない
辺りは赤く、灼熱の業火に飲まれてる

「喉が渇いた」

裸足の少年は真っ黒な堅い地面を歩いている
足の皮膚は剥がれ、所々赤く染みている

身体中真っ黒な煤が付着している少年はこの世界にたった1人の人類だ

「何かあるかな」

3日歩き回ってようやく見つけた場所だ
生ゴミのようなひどい匂いが漂ってくるが、匂いがあるだけましだ

「臭い。食べ物ありそう」

少年の手は目の前にあるゴミの山に向かって伸ばしていた。
無我夢中で山を漁った。
鉄屑やプラスチックの塊など、なかなか期待通りの物が出てこなかった。

「おかしい、匂いはするんだけど」

どうにも自分の嗅覚を見誤ったのか、少年の手は一旦止まった。

「でもこの一帯はゴミがたくさんあるから、別の山にあるかも」

その後も何個もあるゴミ山を、少年は全神経を使いながら必死に探し回った。
しかし、何も見つからない。

「帰ろう」

この世界に帰る場所なんてないのだが
一つの場所を離れる度に口癖としてそれを発してしまう。

ゴミ山を離れた少年の背中は暗い闇に消えていった。



3/9/2023, 6:45:49 AM