かまぼこ

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私は、大きくなったら空を飛べると信じていた。
そう思ったきっかけは、アニメだった。
幼少期、空を飛べる女の子が街の困っている人を助けるという内容のアニメをよく見ていた。
その時から私は空を飛ぶことに憧れ、
「16歳になるまでに空を飛ぶ」と、心に誓っていた。
(16歳なのは、例のアニメの少女の年齢が16歳だったからである。)
今、私は16歳だ。空なんて飛べていなく、地上に縛られている。みんなよりも汚れている(ペンのような汚れが多くあった)机と上履きを使い、便所で弁当を食べていた。
いつも通り、便所で弁当を食べていた時、
床に蛾の死体が落ちていた。その蛾は雑巾の色
(それも特に汚いもの)をしていた。それを見て、私は不快な気持ちになることはなかった。むしろ憧れがあった。
こんな汚い場所で朽ちているこの蛾も、朽ちる前は
空を飛んでいたのだ。
私はいっそう、この蛾になりたかった。
そこで私はハッとした。食べていた弁当を風呂敷に包み直し、トイレを出た。
階段を登り、最上階を目指した。
屋上は開放されていないが、屋上の下の階でも十分な高さだった。(最上階は4階だった。)私は最上階の窓を開け、下ではなく上を見た。
一度飛んだ生き物も、死ぬ場所は地だ。
ならば、私も一度空を飛んで地に朽ちれば、あの蛾のようになれるのではないか。
こんな汚い世界と上履きとはさよならだ。
私はこうして校舎の最上階をあとにした。

7/19/2025, 2:06:09 PM