奴は目の前には鋭い眼差しで私を睨みつけていた。
こんなになるなら山なんて来なければよかった。
私は生粋のインドア派だった。仕事以外は基本家でゴロゴロか創作活動に勤しむが、同僚から山への誘いがあった。
当初はもちろん断っていたが、私の気になっている人である片桐さんも参加すると聞いて慣れないながらも参加に判を押した。
まぁ、私にも装備をしっかり整えずメンバーも聞かずで数え切れない程非はある。だからといって嫌いな上司の接待と山登りなんてただの苦行でしかない。私は一向に終わる気配がない山道をただただ適当にそれっぽい相槌をしながら1歩1歩足を前へ出していた。
苦行は順調だった。奴が現れるまでは…。
1時間程歩いた時、異変を感じた。
「酒井くん。なにか変じゃないか?」
上司はかなり鋭かった。その直後、熊が飛び出して来た。それは真っ先に私を狙うかと思ったが上司を真っ先に始末した。不思議と悲鳴は出なかったが、驚いてその場を動くことは出来なかった。
頭部を失った上司を転がして遊んだ後に私を睨みつけた。逃げようとして背を向けて走ってしまった。
かなり早く走ったと思うけどもインドアは限界に近い体で走り背中に鈍い感覚が走った。
「うん、死ぬな」
楽観的な感想を持って私は崖から落ちた。
山ってかなり厳しいよな。怖かった。次はクマに遭遇しないルートを選ぼうと思う。リセット出来ないゲームは怖かった…。
「よし、社員旅行があるからゲームはこれまで…。」
そのまま登山の道具を準備した。
10/16/2024, 7:43:29 AM