maria

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「あいまいな空」


校舎を出ようとすると
外は雨
朝は晴れてたのに
この季節ときたら油断ならない。

最寄りのバス停まで25分、
小止みになるのを待つか、
反対方向へ走って10分のコンビニで
傘を買うか 決めあぐねていると

「美貴?」

振り返るとクラスメイトの由佳だった。

「傘ないの?」

「うん。
 天気予報聞きそびれちゃってさ」

ふうん。と言いながらカバンから
折り畳み傘を出す由佳。

タイミングをみはかって
バイバイ、また明日 を言おうかと
ぼんやり眺めていると

「どうしたの?
 入って行くんじゃないの?」

え……。
彼女にはいつもドギマギさせられる。
同じ女性なのに
なんだか男前。

「あ、ありがとう……」
あじさい模様の傘に入ると
「カバン、外側に持ってね」
といって躊躇わずに
私に腕を絡ませる。

なんでドキドキするんだろう。
「ごめんね、狭くなって。」
照れ隠しにそういうと

「気にしないで。
こんなあいまいな空の日は
傘を持ってくることにしてるから。

だから、よかったね。」

と微笑む由佳。

よかったね、  私が?
それとも  由佳が?

私の頬も、由佳の頬も
傘のあじさいの花の色を映して
ほんのり染まる

まだあいまいな この季節

まだあいまいな この気持ち

    あいまいなのも 悪くない


         「あいまいな空」

6/14/2023, 1:16:09 PM