ついてない、そう思った。
大したことも無い、ごく普通の日常。
それでも少し、疲れていた。
今日の朝は少し余裕がなくて、
天気予報を見落としていたんだ。
何時も、折り畳み傘持ってたのにな。
今日に限って、忘れてしまったよ。
嫌な予感はしていたんだ。
黒く分厚い雲が近づいて来たから。
ぽつぽつと、肩に雨粒が落ちる。
静かに染み込んで、体を冷やした。
周りが傘を差していく。
言い知れぬ疎外感に、身を震わせた。
柔らかい雨が頭を、輪郭を撫でる。
それは母の手つきを彷彿とさせるもので。
最後に頭を撫でてもらったのは、いつだっただろうか。
嫌いなものを残さずに食べられた時。
母の手伝いをした時。
テストで良い点を取った時。
温かくて大きな手に、頭をこねくり回されたものだ。
そして今、日頃の苦労を労わって貰えたようで。
尚も体は寒さで震えているが、
胸の奥がじんわりと熱を孕んだ。
たまには、傘を忘れるのも悪くないかもな。
眩しく、暖かく、そして当たり前だった過去に耽った。
11/6/2024, 6:11:05 PM