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▶116.「さぁ冒険だ」
115.「一輪の花」
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1.「永遠に」近い時を生きる人形‪✕‬‪✕‬‪✕‬
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〜人形たちの知らない物語〜

目を開けると、
私の持てる全てを注いで作り出した人形が、
寝床に横たわる私の左手側に腰掛け、私を見つめていた。

技術局で過ごした仲間が作ったメカを迎えに行きたくて、せっかくならと作り始めた人形だった。
旅に出ることを諦めて残りの命を人形の仕上げに使う。

そう決めたことに悔いはない。

だが、このままでは‪✕‬‪✕‬‪✕‬とナナホシが出会うことはないだろう。


「は…っ」
喋ろうと口を開いたが掠れた声しか出ず、咳き込んでしまう。
すぐさま✕‬‪✕‬‪✕‬が助け起こし、水を含ませてくれた。

「…✕‬‪✕‬‪✕‬、ありがとう…。私もあとわずかだろう…すまないな」
「はい」

「私が死んだら…この家のものは全てを処分して、お前は旅に出るんだ」
「はい」

「色々なものを見聞きして、人間とは何か、自由とは何か探してほしい」
「分かりました。私にとって時間の経過は苦痛になりません。博士が言うものをできる限り探します」
「頼ん、だぞ…」

これで、これでいい。
いつか、あの技術局にたどり着いてナナホシに出会える日が来るかもしれない。

根拠に欠ける予測だった。
しかし、____は訳もなく、大丈夫だと信じたのだった。





世界でただ一つの人形。

もっと成長していく姿を見ていたかったから、
お前に完成という言葉を伝えられなかった。

生きるものは未完成であるからこそ美しい。


私自身のことは何も持っていかなくていい。
技術が便利に使われていた時代はとっくに終わったのだから。

結局、自由とは何だろうな?
まぁいいよな。



一瞬が永遠にも感じる。

なのに、
今感じている気持ちの何も、
言葉でも瞳でも伝えられなくて

彼の腕に触れるのが精一杯だった。


今こそ、さぁ冒険だ。

行っておいで、私の愛した人形。



〜人形たちの知らない物語 [完]〜

2/26/2025, 9:41:29 AM