君が私を好きじゃないのはわかっていた。
ああ、復讐だったのだろう?
君の愛した人から全てを奪った私への。
わかっていた。
あの子も彼の子どもなのだろう。
私の子ではなく、仇敵の子どもを育てさせる。
それが君の復讐。
なぁ、私からお願いがある。
あの子には本当の事を教えてほしい。
あの子の父が私ではなく、彼だった事を伝えてほしい。
彼の素晴らしさを教えてほしいんだ。
なんで?
ああ、最初は彼の子と気付かなかったよ。
だが、しばらくして気付いた。
気付いた時には愛おしかった。
そして、嫉妬に駆られ、彼から全てを奪った事を悔やんだ。
ああ、彼と共にこの子を見守りたかったと思ったのだ。この子から本当の父を奪った事の罪を知ったのだ。
今でも、こうして、病で死の淵にある今もその事が胸にある。
だが、それも私への罰であり、した事への報いなら受け入れられる。
だが、あの子はどうだ?
私の愚かさに付き合わせるのか?
それが、ただ、申し訳ないんだ。
だから、あの子には全てを語ってほしい。
その上で全てをあの子に選ばせてほしい。
それが、私の君への恥知らずな頼みだ。
ごめんなさい?
いい。
それを言うべきは私だった。
彼から全てを奪った私が言うべきだった。
どうか、あの子を頼む。
……ああ、お前か。
お前の所に行けるのか。
いい。
私はお前の所に行けない。
だが、次があるなら。
お前の事を祝いたい。
3/26/2024, 1:09:28 AM