朝日の温もり
今、私は家出を決行した。
……なんにも、これといって考えというものはないけど。
だって、あんまりだ。
「私の将来」の話なのに、私の感情は無視したお父さんの主張。その主張に「私」の希望は全く入ってないなんて!
「ねえどう思う!?」
「いやー、だからってうちに来られても」
なんとなく、親友に話したくなり、家も知ってるしで。
親友が一人暮らしする家に、押し入ってみた。
「だってー」
「えーっとさ。……正直、おまえはまだ恵まれてるって、うちは思うけども」
「うぅ……」
彼女が一人暮らしなのは、家族がいないからだ。そんな相手に「恵まれてる」と言われたら、ぐうの音もでないというもの。
それでも。
「今日だけでいいから、ちょっと大目に見てよ! お願い!」
「……今日だけ、だかんな」
「ありがとう!」
この親友は、私にちょっと甘いところがある。
彼女の見た目と口調は、ちょっと悪い。もっというと、男っぽいとこがある。
学生時代は、そのせいでたくさん、周りから避けられたり、イビられていた。
でも、そんなの私は気にしない。
だって、ただの通りすがりながら自分もずぶ濡れなのに、雨の中で、初めての家出をした私を、心配して追いかけてくれた。それを「お人好し」と言わずなんと呼ぶのか。
あの時から、私から彼女への信頼度はMAXなのだ。
彼女的にも、懐かれることに慣れていないからなのか、なんだかんだこうして、甘やかしてくれる。
私は、そんなところにつけ込む悪い友だ。自覚はある。でも、改めるのは、また今度。
明日のことは、また明日になってから、考えよう。
そう思い、彼女の布団の中に遠慮なく入る。
「おめえは犬か」
でもきっと、そんなに悪い気でもない。声でわかる。
「ふふふ、ねえ」
「なんだよ」
「朝日、大好き!」
彼女の名を呼び、ごろんと寝転ぶ。
この温もりは、なんとも言いがたいくらい、心地よい。
6/10/2024, 3:49:30 AM