望月

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《君と一緒に》

 一緒にいられないことが不思議だった。
 同じ境遇に生まれた、双子だったのに。
 それでも大人達は口を揃えて言うのだ。
 お前達は生まれてはならなかった、と。
 双子で生を受けたことが禁忌とされた。
 そんな時代に、世界に生まれたが故だ。
 殺されなかっただけ、よかっただろう。
 だが、顔を合わせることを禁じられた。
 過ごす空間も時間も、全て別けられた。
 そうして時が経ち、十三の歳になった。
 その年に飢饉と、天災が起こったのだ。
 双子の所為で天罰が下ったに違いない。
 そう皆は断じて、天に返そうと案じた。
 かくして双子は生まれて初めて出会う。
 互いを存在を禁忌と知らされた子らが。
 最期まで共に過ごした時間を得られず。
 ただ双子であることを忌まれた二人は。
 死して漸く、共に在ることを望まれた。
 それでも生かされた事実を知る双子は。
 感謝を忘れずに告げ、手を繋いで行く。
 滝壺の中を双子は、一緒に飛び込んだ。
 やがてこの地に平穏が訪れてしまった。
 双子が一緒に、世界から消えたことで。
 けれども双子は恨みを言うことはない。
 一生会えないと言われていたのだから。
 生きている内に顔を見られたのだから。
 それを奇跡と思ってしまう人生だった。
 双子はどこまでも純粋に想うのだろう。
 最期だとしても、君と一緒にいられた。
 それが、唯一にして最高の贈り物だと。

1/7/2024, 9:38:31 AM