初心者太郎

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街灯の下で、壁に寄りかかるように座っていた。身につけている布は、元が何色だったのか分からない程に褪せている。

身体は凍りそうな程冷たいし、寒い。

三日前、僕は家を追い出された。
魔法が全てのこの世界では、才能のない僕は要らない子だった。

「もう、いやだ……」

この三日間、僕は腹を満たすものを求めて歩き続けた。しかし、何も手に入らなかった。
僕は今日、ここで野垂れ死ぬのだ。

もうこれから苦しい思いをしなくて済むのだから、幾分か気が楽になる。

「少年よ、ここで死んではダメじゃ」

声が聞こえた。少ししか開かない瞼を声の方向に向けた。高そうで温かそうな服を着た老人が、目の前に立っていた。
彼は僕に水とパンをくれた。

僕はそれに喰らいつく。

「お主の旅はここで終わってはならぬ。才のある者がこんな最期では、神が嘆く」
「でも、僕、魔法、使えません、よ」

僕は必死に口を動かして、言葉を伝える。

「ああそうか、周りの環境がそうさせたのじゃな……。もし生きたいと思うのなら、着いてきなさい」

老人はそう言うと、歩き始めた。

終わりだと思っていた道の先に、続きができた。僕は立ち上がって、置いていかれないように着いて行った。

これが僕と師匠の最初の出会いだった。

お題:旅は続く

9/30/2025, 4:33:18 PM