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──『天使は真実しか言わない』
生まれたときから、天使はそう言われて育ってきました。





「大きくなったら宇宙飛行士になりたいんだ」
「なれるよ、きっと」

はらり、と羽根がひとつ落ちました。

「早く学校に行ってみんなと遊びたい」
「行けるよ。遊べるよ、きっと」

はらり、はらり。

「明日も生きたい」
「生きられるよ、きっと」

はらり、はらり、はらり。





少年が天使になった日、天使の羽根はすべてなくなっていました。

「嘘をついてごめんなさい。わたしはもう、天使ではなくなってしまったみたい」
「そんなことないよ。天使さんの嘘は、僕を救ってくれたんだ」

少年天使が拾い上げた羽根が、ふわりと天使へ戻っていきます。

「一緒に帰ろう。優しい嘘をつく天使がいてもいいんだよ、きっと」

ふたりの天使は揺れるように、光の射す方へ羽ばたいていきました。



お題:揺れる羽根

10/25/2025, 12:50:33 PM