螢火

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「無色と透明って違うわよね」
「でも、無色透明って言うじゃない?」
「それは無色で、かつ透明なのよ」
「そっか。透明は綺麗な氷とかガラスみたいな感じでしょ?じゃあ無色は?白なのかな?」
「でもそれじゃ白って言う色がついているわね」
「やっぱり無色も透明なんだよ。だってこの世に色の無いものは透明なものしかないもの」
「うーん。なんだか腑に落ちないわ」
「じゃあ、春ちゃんは無色ってなんだと思う?」
「うーん、、まず色ってなにかしら?」
「色は色でしょ。白とか赤とか」
「そういう意味もあるけれど、彩度とか充実感って意味を示す時もあるわよね」
「例えば?」
「人生バラ色とか」
「えー?それは、、うーん」
「だから私は無色って言葉を作った人は、きっと赤とか黒とかっていう意味で色って言いたかったんじゃないと思うわ」
「どういうこと?」
「だから、彩りって意味で色って言いたかったのよ」
「春ちゃんは難しいこと考えるねぇ」
「もー、千夏真面目に聞いてないでしょ!」
「聞いてるよぉ!ただちょーっと難しくて意味がわからないだけで、、」
「まったく、、」
「、、、春ちゃんの人生はさ、何色?」
「えー?難しいわ、、そういう千夏の人生は?」
「私の人生は今は無色かな」
「え!なんで?毎日結構楽しそうじゃない?赤とかオレンジとかって言うのかと思ってたわ」
「えー笑笑」
「なんで無色なの?」
「そんな分かりきったこと聞かないでよぉ」
「はぁ。千夏、無色って言葉はこれからを指す言葉じゃないわ。現状を指す言葉よ」
「また春ちゃんが難しいこと言い出した、、」
「そうじゃなくって!」
「どういうこと?」
「だから、今は無色かもだけどこれからいろんな色に染められるでしょってこと」
「じゃあ、私の人生は黒かもね」
「黒?」
「だって春ちゃんとの思い出でいろんな色を付け足したからもう真っ黒」
「ならキャンバスを更新していけばいいじゃない!」
「ううん。もう無理だよ。」
「なんで?」
「だって春ちゃんもういないじゃん」





あの子は青空の日
どこから入ったのか
学校の屋上に靴を並べた
黒い長い髪が揺れて
最後に少し地面が揺れた








------------------「置いてかないで」

『無色の世界』

4/18/2024, 4:22:36 PM