『時計の針』
カチッカチッ
と時計の針が進む音が部屋の中に響いている。
普段なら、生活音にかき消されてしまうその無機質なリズムが、今夜はやけに耳につく。まるで「お前は今、何を生産しているのか」と、一秒ごとに問い詰められているような気分になるから不思議だ。
デジタル全盛のこの時代に、わざわざ針のある時計を置いているのは、時間の経過を「数字」ではなく「量」として捉えたいという、私のささやかな拘りだったはずだ。しかし、こうして静まり返った部屋で対峙していると、減っていく残量をまざまざと見せつけられているようで、少しだけ息苦しくなる。
針は止まらない。私の思考が堂々巡りをしている間も、世界は容赦なく前に進んでいる。ふと、スマホの画面を点灯させてみる。音もなく切り替わるデジタルの時刻表示には、あの秒針が刻むような切迫感はない。そこにあるのは、ただ結果として提示される現在地だけだ。
私はまた視線を壁の時計に戻す。カチッカチッ。その音は、私を追い立てる警鐘なのだろうか。それとも、まだここに居てもいいのだと肯定する心臓の鼓動なのだろうか。
2/6/2026, 5:06:49 PM