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『ごめんね』

謝るぐらいならやるなよ!何余計な事してくれた訳?

テーブルの上には、飛び散ったご飯粒、処分の仕方がわかなかったらしい材料の断片が所狭しと転がっていた。

ごめんなさい。
そう言って怯えているのか、目の前で次に振りおろされるかもしれない小刻みに震えている華奢な拳を見る。

まぁまぁ、お母さん、理由を聞きませんか?
潰れてひしゃげているおにぎりらしきものを横目で見て、母親らしい女性に声をかけて、俯いている子の肩に触れる。肩がビクンとはねあがる。
身なりはちゃんとしているな。

理由?腹減ったなら買ってこいって金渡してあるんだよ。遊びでこんな事すんじゃないよ。

違う。遊びじゃない。片付けはするよ。いつも、夜遅く帰って来てお腹空いているみたいだから、前に作ってくれた丸いおにぎり作りたかったんだ。だって、美味しかったし、美味しいねって言ってくれるかなって。
うまく出来なくて『ごめんね』

拳がおにぎりに振りおろされるのかと思うぐらいの勢いで伸び、ゆっくりと指が開き歪な塊に触れる。

『ごめんね』今から一緒に作ろうか。
材料は目の前にあるし、活きがいい感じだよ。

あぁ、この家、変って言われていたのはそういう意味だったのか。巡回気をつけろって…もう遅い。
『ごめんね』帰れそうにないな。
もう意識が遠くなっているんだ。

5/29/2024, 10:12:00 PM