『手を繋いで』2023.12.09
「息子の手がちょっとでっかくなっててなぁ」
嬉しそうに話す長身の彼は、そのハンサムな顔に笑顔を浮かべている。
「ママが良いっていうときもあんだけど、俺といるときは手を繋いでくれるんだよ。それがまた、なまら可愛いんだわ」
彼はそれをツマミに美味そうに酒を飲む。実に彼らしい。子煩悩で愛妻家。大きな子どもだと揶揄されているが、こと家庭のこととなる頼もしくなる。
「子どもがでっかくなるのは早いなぁ」
エヘエヘとだらしなく見える笑顔も、見ていると微笑ましいきもちになってくる。羨ましいかぎりだ。
「両親に手を繋いでもらったことなんて記憶にないなぁ」
返事が欲しかったわけではない呟き。すると彼は嬉しそうだった顔をくしゃっと悲し気にゆがめて、こちらの手を握ってきた。
「俺が手を繋いでやっからな!」
「あー、はいはい」
彼に限らず他の仲間たちは、こちらの幼少期の事情というやつを知っている。変に気を遣ってこないので楽だが、たまにこうして構い倒してくる。
嬉しくないわけではないが、どういう対応していいか分からないので困ってしまう。
ただ、不快ではない。
不快ではないが、このままだと手を繋がれるどころか、ハグもされかねないので、適当にあしらうことにした。
別に照れているわけではない。断じて。
12/9/2023, 8:49:23 PM