紅黒零茜

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「こんな夢を見た」

ふと目を開けると、そこに広がっていたのは……見たこともない景色だった。
……いや、景色と呼んでいいものかも怪しいほど、無機質な空間だった。
そこにあるのはワンセットのテーブルとイスだけ。
壁も天井も無く、空も無い。
床を見ると足元には波紋のようなものが拡がっている……水面なのだろうか?
しかしながら沈むような気配もなければ、足を強く踏み込んでも水飛沫があがる様子もない。

立っていても何も起こらないので、とりあえずそのイスに座ってみる。頭の中で100ほど数えたあたりで、深いため息が思わずもれる。
「座っても何も起こらない……」
いや、じゃあ一体どうしたらいいんだ……?
というかこの空間本当になんなんだ……
非現実的なあたり、多分夢なんだろうけど、だとしてもこの夢はなんなんだ……
何もない空間の夢には、確か物事の整理が出来てるだとか、新しいことが起こる?だとかそんな意味があると、友人は言っていたっけ。
「だとしてもこれはちょっとなぁ……」
静かすぎるし何もなさすぎて、逆に疲れている感じがする。
「いっそ寝てみたら醒めたりなんて」
「しないぞ」
「しないのか……ん?」
周囲を見る。しかし声の主は見当たらない。
「足元だ。よく見ろ」
言われるがまま見てみれば、そこに居たのは……

「……はっ!」
勢いよく起き上がる。冷や汗で全身びしょびしょだ。
「……やっぱ夢か……」
自分の足元にいたのは、大怪我をした自分だった。
「夢、だけど。気をつけろよってことかね……」

後日、「こんな夢を見た」と友人に相談してみたところ
「まぁ怪我に気をつけときなー」
と軽く言われて終わった。
ちなみに、それから数年経っているが今のところそんな大怪我をした経験はない。
……ホントなんだったんだあの夢……?

1/23/2024, 4:27:47 PM