幼い頃に日光アレルギーと診断されてから、
いつも隠れるように生きている。
とはいっても、もともと暑いの嫌いだし、泳げないから夏のプールも嫌だし、日影はだいたい涼しいので、特別に劣等感を持ったことはない。
プール。体育祭。焦がすような日差しをいっぱいに受け止めてはしゃぐ皆を、僕はいつも目深の帽子をかぶって眺めている。
すると、彼女はいそいそと僕の隣にやってくる。
私は身体が弱くてドクターストップかけられてんだ、となぜか得意げそうにいう彼女を変な奴だと思ったけど、
いつだったか、ドクターストップって単語をただ言いたいだけなんだってわかってから、その底抜けの明るさが妙に眩しくみえてきた。
たとえば、教室に気まずい空気が流れていても、
彼女はどこかけろりとしていて、何だか拍子抜けしてしまうほどだけれど、君はいつもそうやって、
どんよりした空に光を差し込んでいたんだと。
「君って太陽みたいなんだな。」
ある日のプール見学中、屋根の下でも眩しそうに目を細めて笑っている彼女をみて、僕はふと、そう口にしてしまった。全身の血が湯だつ思いだった。
皆のはしゃぐ声も水しぶきも、肌を焼く強い日差しも、あの瞬間は何も感じなかった。
君はちょっと意外そうに目をぱっちりさせる。
それから屈託ない笑みを浮かべて
「君にとっては不都合じゃない?」
いや、そういうことじゃない。
日光アレルギーだってこと、あの瞬間だけは忘れていたんだ。と、
恥ずかしくて、僕は結局いえなかった。
はやまる心臓の鼓動が、この胸を知らない感情でいっぱいにする。太陽の光を全身に浴びるのって、きっとこんな感覚だ。
君の眩しい視線から逃れるように、そっとうつむいた。
7/3/2023, 9:47:52 AM