こういう都市に住んでいるけれど、素敵な場所を見つけた。折角なら一緒に見たいんだ。
そう思って、仕事帰りにと彼女を誘った。
仕事関係で仲良くなったビルのオーナーから許可をもらって、ビルのエレベーターに乗っていた。
「この建物に入ったのは初めてです」
「俺も初めて」
顔を合わせて笑い合う。
エレベーターが止まると、青年は教えてもらった階段に向かい昇って行く。
「こんなところ、登っても大丈夫なんですか?」
「大丈夫、許可はもらってあるんだ」
「そうなんですね」
青年はしっかりとした扉の前に立つと、彼女に手を差し伸べた。
「この先は危ないから、手を繋いでね」
「はい!」
しっかりと手を繋ぎ、青年は扉を開けた。
風が強く吹き抜ける。そこはヘリポートだった。
「わあ……」
瞳に写るのは、夜空と都市に住んでいる生活の光。
建物や、信号の動かない光。車や電車の動く光が混ざり合い、高いところから見る街の明かりはキラキラとして眩かった。
「凄いでしょ」
「はい、きれい……」
うっとりと街を見ている彼女を、青年が見つめる。
「この前、このヘリポートに夜来てさ。ヘリから見た空が凄く良くて、君に見せたくなっちゃった。ちょっとズルしちゃったけどね」
「でも、こうやって見せてくれるの、凄く嬉しいです」
先程の表情より、嬉しそうに微笑む彼女。
青年の人間関係を駆使しまくった甲斐があるというものだ。こんな可愛い笑顔が見られたのだから。
おわり
お題:街の明かり
7/8/2024, 1:51:54 PM