題 意味がないこと
幼い頃からやれ、ひねくれ者だやれ、暗いやつと云われていた。それは成人し、小説家になった今でも変わりはしない。
この世には数多の優れた文士が存在したが、それは選ばれた少数の才能だけであり、他は歴史の渦に飲まれ名を残すこともなく消えていく。
私は、そのなかでも前者のほうだったようで処女作からじわじわと名が広まっていった。
有名になれば、感想などが綴られたファンレターが届き私への称賛、賞賛···果ては対面したこともない私に愛を込めている者も。
普通ならばこんなにも世間から評価され名が広まることに誇らしくなるだろう、鼻を高くし天狗になるだろう。
けれども私は、なぜか満たされない虚しさ、何かが足りない寂しさでいつも無意識にほろりと涙を流してしまう。
独り身の私は猛烈に人肌が恋しくなることがある。そうなれば、猫なで声で私を誘ってくる女を拒むことなく受け入れ一夜かぎりの関係を持つのだ。
安価なバーで女中を口説き、交際をしたかと思えば愛人をつくる。忘れたいことがあれば酒を浴びる。塞がらない虚しさを埋めるように、興味もない物を借金してまで買い集める。
私はいったい、何をしているのか。
向けられる愛を疑い、酒に逃げ、拒み続ける。己の暗く柔らかい部分を隠そうと足掻く。
その果てのなんと滑稽なことか。
11/8/2024, 11:08:43 AM