「てか特別って言葉ってイマイチ特別感無くないですか?」
始まった。彼女は変な後輩だ、以上。
「そ?」
私は特別販売の珈琲ティーをちょっと見てみた。私からすれば特別って書いてあれば特別だ。凡非凡の区別なんて器用なこと私はできない。
「特別って言葉ってもーすごいじゃないですか。サービスとかあなただけとか、そういう言葉と並べて簡単に使われすぎちゃうんです。その過程で特別は特別じゃなくなっちゃうっていうか」
「ナルー?」
珍しく言いたいことがまとまっていないらしい。彼女はいつものマシンガンにオイルを差す何かを記憶から探しているようだ。
「つまりその、本当に特別な存在にはカギ括弧つけたくないですか?」
「カギ?」
「そうです。他の特別とは違う特別で、なおかつ強調も出来て、特別を閉じ込めておける。カギ括弧は私のやりたいこと全部やってくれるんです! そう、カギ括弧が私なんですよ――」
「じゃあ、今日は特別ですよ」
「特別な日にしましょう」
くだらない特別を重ねればいずれ見つかるだろうか。
私だけのものにしたくて、でも自慢したくて、誰とも違う――
あなたは「特別」……
なんて、言える人。
【特別な存在】2024/03/23
3/23/2024, 11:41:27 AM