燈火

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【突然の君の訪問。】Other Story:B


ピンポーン。ふいにインターホンが鳴った。
なんだろう。今日は来客も荷物が届く予定もないのに。
アパートの玄関扉には覗き窓が付いている。
外からも覗けるらしいと知って塞いだ無用の長物。

今こそ使うべきか。蓋を回して左目を当てる。
「うわっ!」至近距離で目が合い、反射的に顔を引いた。
防犯に役立つなんてやっぱり嘘じゃないか。
恨みがましい気持ちで覗き窓を睨む。

ピンポーン。またインターホンが鳴った。
なんでインターホンにカメラがついていないんだ。
節約のため、家賃の安い家を選んだのがいけなかったか。
呼び出し機能だけあってもあまり役に立たない。

僕は観念して扉を開けた。「はい。ご要件、は……」
顔を上げて、固まる。まったく、誰かと思えば。
「久しぶり。急で悪いんだけど、泊めてくれない?」
自由気ままな幼なじみが、満面の笑みを浮かべていた。

「タチの悪いイタズラすんなよ……」気が抜ける。
ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ怖かった。
「ごめんごめん」びっくりさせようと思って、じゃない。
怪談とかお化け屋敷とか、苦手だと知っているくせに。

とりあえず彼女を招き入れ、適当に座らせる。
「で、泊めてくれってなんで?」キョトンとされた。
「え。了承したから入れてくれたんじゃないの?」
「理由次第だよ」外は寒いから一時的に入れただけだ。

聞けば、明日、近くで行われるイベントに行きたいとか。
知らんと放り出したいが、もう暗いので仕方なく許す。
「やったぁ。昔みたいに一緒の布団で寝る?」
「バカ」断ればよかった。またそうやって僕の心を弄ぶ。

8/29/2024, 8:54:00 AM