敷かれたレールからはみ出さずに歩ける人間は世の中そう多くない。良い子でも良い大人でもなかったけれど、それでも何となく軌道に沿って生きてこれた。そんな自分の隣に何故今、レールの方を捻じ曲げて走ってきた人がいるのだろう。普通に歩いていれば、あるいは多少横に逸れたところで自分の軌道にこの人が突っ込んでくることはなかったはずだ。道理の通らない衝突事故。この人曰く奇跡らしいが、おかげでこっちのレールはひしゃげて行先もわからないのだから迷惑極まりない。そんなわけで今日も肩を借りながら貸しながら、ボコボコに荒れた道を歩く。隣には確かに体温。地に足ついている、生きている実感がある。そう思ったのはもしかすると人生で今が初めてかもしれなかった。
(題:この道の先に)
7/4/2024, 7:50:48 AM