冷たい石畳の床だった。鉄格子の間隔は広いがいくつも扉があり、果てしなく広い塔だった。
外は朝なのか夕方なのか。薄曇りの凍える空だ。
「誰も来ぬよ」
フロックコートの男は言った。緩く波のかかった髪に長い耳に赤い瞳だった。
「国のものも騎士も軍も」
恐ろしいか。嘆くがいいと笑う。
女はもう失うものは無かった。
「仲間も部下ももう居ないわ」
男の眉がぴくりと動く。だがそれだけだった。
「…精神を病んだものはつまらない。抵抗しろ。そのほうが好みだそうだ。入れ」
大きな怪物が2体牢屋に入ってきた。
「殺すなよ」
コートの男は去っていく。
怪物2体と、仲良くお茶会でもさせようというのか。
1/12/2024, 12:57:17 PM