やさか

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 美しくて、少し寂しい人だった。
 どうして「寂しい」と思うのか、よくわからない。
 軽く伏せた睫毛の向こう側で、黒い瞳があんまり静かに見えたから。それとも、いつもささやかに微笑うくちびるの端に、時折、笑みとは違う角度を宿していることがあるから。
 あのひとはいつも、夕の陽に似ていた。
 眩しさの背中に、宵の暗さを柔らかく纏っていた。
 けっして輝かしいばかりではない人だったのに、あのひとはわたしにとって、沈まぬ太陽のような人だった。
 わたしはあのひとが好きだった。たぶん、誰よりも。


 #太陽のような

2/22/2024, 1:50:51 PM