ここはどこだろう。真っ暗闇で誰もいなくて、呼びかけても誰も返事をしてくれない。
旅の相棒の名前を呼んでみても僕の声が闇に吸い込まれていくだけだ。
だんだんと心細くなってきたけど、それでも諦めずに呼びかけていると前から相棒が、彼が歩いてきた。
嬉しくなって駆け寄った瞬間、彼が血を吐き出して倒れた。
とっさに彼を支えようとしたけど、体格と身長差から支えきれずに彼と共に倒れてしまった。
僕は声をかけながら彼を揺さぶるけど、彼は動かないし喋りもしない。……むしろ、どんどん冷たくなっていく。
「やだっ! やだぁ……! ひとりに……っ、僕をひとりにしないで!
お願いだから……、起きてよぉ……」
泣きながら揺さぶっていると、どこからか僕の名を呼ぶ声がする。
それがひときわハッキリ聞こえた瞬間、僕の目が覚めた。
さっきのは夢だったんだと息を吐いて安心していると心配そうに彼が声をかけてきた。
「すごい魘されてたが……大丈夫か?」
「……ねえ、座って」
「は?」
「いいから!」
困惑顔の彼だったけど僕の言う通りに座り、僕は彼の膝の上に座って胸に耳を当てる。
ドクン、ドクン、と熱い鼓動が聞こえる。
その音を聞いていると、ああ彼は生きているんだと無性に喜びを感じて、さっきまで荒れ狂っていた心が静かに凪いでいく。
「怖い夢でも見た……んだよな。
お前の行動から察するに……俺が死ぬ夢とかか?」
彼の言葉には答えずに黙っていたら彼はそれを図星だと受け取り、ククッと笑った。
「いつもはしっかりしてんのに、やっぱガキだな」
「ガキじゃない。もう立派な十歳だもん。それに、笑い事なんかじゃないし……」
「そーかそーか。だが俺は嬉しいぜ?
お前の年相応なところ見られて、な」
彼は僕をギュッと抱きしめて僕の耳元で囁いた。
「大丈夫。俺は死なねえよ。つか俺がお前を置いて逝くわけねえだろ」
その言葉が嬉しくて、僕は自然と笑顔で頷いていた。
彼ならこの言葉を嘘にはしない。
誰に何と言われようと僕は心からそう思っている。
7/30/2025, 3:34:25 PM