人の名前には由来があるそう。
優しい子になるようにと“優花”だとか、勇気のある子に育ってほしいと“勇輝”とか。
でもボクはクローンだから、名前の由来というものがない。
そもそも名前で呼ばれることがほとんど無いに等しかったから、名前に対する執着もなかった。
それで悲しいと思ったこともないし、名前を呼んでほしいと願ったこともない。
でも今はちょっぴり執着しているかもしれないと思う。
皆が自分を、“飴嶋喜楽”として呼んでくれるから、呼ばれているうちは、まだここにいて良いのかなって気分になる。
「喜楽」
この瞬間が一番好き。
『なあに?』
「……何だっけ。まあ、思い出したら言うわ」
『おっけ~』
一番大好きな声で、一番大好きな人から名前を呼ばれるのは、随分と幸せな気持ちになるらしい。
仲間に呼ばれるのとはまた違う感覚。
仲間に呼ばれると胸がじんわり暖かくなるけど、この子に呼ばれると水の波紋のようにすうっと自分の中に浸透する。
ああ、好きだなぁって惚れ直す。
ボクはつくづく彼女には弱いなあと思う。
でも仕方ないよね、大好きなんだもん!
どうでもよかった自分の名前を、愛おしいものへなおしてくれた人へ。
愛してる。これからもずっと傍に居させてね。
ーお題:私の名前ー
7/20/2023, 5:42:07 PM