「…どうでしたか?」
「あ…何が?」
今俺たちは空を見上げている。焚き火の火はとうに小さく消えかかっているがそれよりも、目が離せないのだ。星が次から次へと流れていく。これが流星群なのだろうか?先程淹れたコーヒーを注いだマグカップで手を温めつついれば隣の男は静かで穏やかな声音で聞いてくる。主語が抜けている以上一瞬では理解出来ず思考はフリーズするも直ぐに意図することは分かった。同時に流れ星じゃなくその話かよと笑いが溢れた。
「わりぃ。一瞬考えたは。質問がわからなくて。…お前と抜け出したあの夜からずっと最高だよ」
「そうでしたか。それならよかったです。…君を誘ってよかったのか…ずっと気になってたんですよ。」
「あんなとこに居るよりはよっぽどよかったよ。それに、多分普通に生きてたら見れないもんを沢山見れた。俺は結構満足してるよ。…お前は?」
「僕も。まさかこの歳でこんな大冒険をするなんて大学に居た頃は思いもしなかったですけど充実しています。」
その時、一際大きく歪な何かが俺たちの後ろから飛んでいった。
「あとどれくらい続くんですかね?」
「さあなー。それまでに俺たち以外は皆死んじまったりして。」
「うわー、それ一番嫌なやつじゃないですか?」
きっと普通の時なら俺たちはもっと呑気に暮らして接点なんかなく、一生お互いを知らないままだったのだろう。軽口を叩き合うたび居心地の良さを感じる。こいつに会えてよかった。この状況に感謝をしてるなど口が裂けても言えないが。
「さてと。また明日も移動だからそろそろ寝ようぜ。」
「そうですね。」
体も冷え始めてきたため自然の中に隠すようにはったテントに入る。俺たちはいつか幸せになれるのだろうか…それとも置いてきたあいつらの呪いを受けるのだろうか?まだ分からない。ただこいつとならば結構どこでも、何をしていても悪くない。いつかのその日だって。
「おやすみな。」
「おやすみなさい。」
いつも通りの挨拶だ。明日はどこに向かおう。
俺たちの果てはまだ来る気配がない。
1/31/2023, 5:35:13 PM