ガルシア

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 ほとんどの人を見下している高身長、険しい顔は整っているだけに威圧感があり、現実主義者で論理的。彼を知る人からの総評は、人間っていうよりロボットっぽいよね。そんな男性が、私の先輩だ。
 趣味とか好きなこと、ないんですか?
 ひょんなことから知り合ってわかったのは、雑談に誘うと意外と乗ってくれるということ。しかも真面目に考えてくれるので、今日も私は自販機前で偶然出くわした彼に会話をもちかけている。アーモンド型の目が虚空を少しの間見つめた後、私に向き直った。
 喫茶店で本を読んだりはする、と答えた彼に愛読書を伺うと、私もかなり読み返した小説のタイトルが挙げられる。すっかりテンションが上がってしまいオススメの本を連ねて今度貸すことを約束していると、自販機から飲み物が吐き出される音がした。ハッと我に返った私に差し出されているのは、私がお財布事情を考慮して諦めた少しお高めのココア。
 飲みたかったんじゃないのか。
 僅かに困惑したような彼にお礼を言いながら、恐る恐るそれを受け取る。だって、買おうか迷っていたことを見ていて、奢ってくれるなんて想像もしていなかった。
 すらりとスタイルの良い高身長、端正な顔立ち、理知的で芯があって、ミステリアスな彼。
 優しくされては、もっと、近づきたくなってしまうじゃないか。


『優しくしないで』

5/2/2023, 4:55:34 PM