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本来の私はいったい何をやっていたのだろうか。何か大事な手紙を運んでいた気がするのだが、もうそれも私のせいで届かない……。夢を描けながら、世界中を飛び回って描いていた時は、色んなものを見よう、届けようなんて思ってはいたが、今じゃあ、この静かなる森へ来て、木漏れ日に魅了され迷って、戻ることも出来なくなった愚か者だ。

私はしゃがみこみ、この森の奥で何故か打ち捨てられている鉄屑に、背中を預ける。これは恐らく未完成の未来への船だ。何故ここに有るのか分からないが、鉄屑になっても堂々とした、ただ君だけが私の最後の拠り所のようだ。

嗚呼、そういえば随分と進んで来て、眠くなってきた。目蓋が重い…記憶の海から、走馬灯のように思い出が甦ってくる。なんて、美しくも愚かな私の夢たちだろう、この深緑に酸素と共に溶け出してしまうみたいだ。

木漏れ日よ、ずっと私の為に光輝け、暗闇で私が寂しくないように。木漏れ日よ、アナタの美しさをもっと早くに手放す勇気があれば、私はアナタの一部になることはなかったのでしょうか。

目蓋を閉じると同時に倒れ込むと、持っていた荷物の手紙が地面に散らばる。それが、一陣の風と共に舞い上がる姿は、鳥のようだった。

届かない……(5/9)夢を描け(5/10)静かなる森へ(5/11)未来への船(5/12)ただ君だけ(5/13)記憶の海(5/14)酸素(5/15)光輝け、暗闇で(5/16)手放す勇気(5/17)

必ずしも全てがうまく届くとは限らない。

5/16/2025, 10:12:10 PM