ストック1

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私はこの都会の一角で、今から星空観賞会を始めるよ
温かいココアを飲みながらね
贅沢なひとときだと思わない?

「先輩、都会は夜も明るいですよ
星なんてほとんど見えません」

それはどうかな?
素晴らしい星々を見られるとっておきのスポットを知ってるんだ
君も来る?

「来てほしいから私を呼んだんでしょう?
私の分のココアを奢るためだけに電話したなら、怒りますよ」

まあ、そうだね
ついて来てほしいし、ついて来ると思ってる
あと、君なら用件を言わなくても来てくれるって信じてたよ

「いきなり、素敵なものを見せるから来なよ、なんて呼び出して
私じゃなかったら断ってますよ」

ありがたいねぇ
君は私の誘いなら、用事がない限りすっとんで来てくれるもんね
じゃ、行くよ
楽しみにしていてよ

「先輩がそんな自信満々に言うなら、期待しておきます」


ほらここ、ここが目的地
どうだね、君ならなんとなく予想していたんじゃないかね?

「まぁ、こんなビルの並ぶ都市部の真ん中で星を鑑賞って言ったら、プラネタリウムですよね」

そう!
でもね、私のサプライズはそこじゃないんだよ
このパンフレットを見たまえ

「あっ
これ、私が昔見て気に入ったやつ……」

復刻上映だってさ
思い出の星明かりのもとで心地よく座りながら、ココアを飲むんだよ!

「わざわざ見つけてくれたんですね
これ、もう一度見たかったんですよ
ありがとうございます」

なんのなんの
かわいい後輩のためさ!

「でも先輩、館内は確実に飲食禁止なので、残念ながら温かいココアは飲めません」

あー、そりゃそうだ
じゃ、今飲もう
飲み切ろう

「あ、私は熱いココアが苦手なので、プラネタリウムを見終わって、冷めてたら飲みますね」

えー、一緒に飲まないの?
まぁ、どうでもいいか
しばしお待ちを……
プハァッ
じゃ、入ろうか

「本当にありがとうございます
まさか前に話したこと、覚えてくれていたとは思いませんでした」

私は後輩を大事にするタイプなんだよ
久しぶりの鑑賞なんだから、今夜は存分に楽しみなね

4/20/2025, 11:05:18 AM