予感
いつもと違うことをすると、きっと何かが起こる。
そんな予感がする。
一段と寒くなってしまった今日は、何もする気が起きなかった。
あんなに満開だった桜の木を見て、今の季節を実感する。あの華やかな春は、一体どこへと行ったのだろう。
そんなやる気がない今日に限って、周りに人が集まってくる。……いや、俺が誘いに乗ったのが悪いのか。
「総司から誘ってくるなんて、珍しい」
「なんだか今日は、自由になりたくて。いつも二人は自由でしょ?」
左之助の言う通り、沖田から盃を交わそうとしてくるのは珍しい。たしか、酒を呑むのは御法度だった気がする。
沖田から見る俺と左之助は、どうやら自由らしい。あまりそんなに自由だと思ったことはないが、この環境では何をしてもいいと、気が許せるということにしとこう。
俺達とは違い、純粋な目を持っている沖田は、盃に酒を入れてくれる。
三人という人数にも関わらず、周りには静寂が漂っていた。ただ布が擦れる音が、五月蝿い程に耳に入ってきた。
「なあ、総司」
静寂を破るように、左之助が沖田に質問を投げかける。
「どうしたの?」
「どうして、自由になりたかったんだ?」
いつもの様に胡座をかき、手に全ての力を預けるようにもたれかかっている左之助は、盃の中に入っている酒を見ながら、そう言った。
何故か沖田は、俺の目を見ていた。
「左之助と斎藤さんが、どこかへ行ってしまいそうな予感がして……」
悪気は無いのは痛い程分かるが、俺達は意味がわからなくて目を丸くしていた。左之助と目が合った時、アイツは本気で信じていたようで、動揺していた。
「そんなに深い意味は無いんだ。……ただ、今日はそんな気分にさせるってだけで」
そんなことを言っている沖田が、一番儚かった。手を伸ばしたらそこにはもう、コイツは居なくなっていてしまいそうだった。
酒を一杯呑んで、一度落ち着こうとした。酒というものは凄まじく、心が安定することが出来た。
「……沖田は、未来を見てしまったんだろう」
予感という言葉は、未来を感じ取る、そんな意味だ。
「そう、なのかな」
確証が持てない沖田に、左之助が話しかける。
「今俺たちが居なくなるわけねえだろ」
「そうだね。二人は、そんな野蛮じゃない」
その予感が、実現されるまで俺達が離れることはない。
俺達はまた、酒を一杯口に入れる。
10/21/2025, 11:41:28 AM