※届いて……
取り残された。
気づいた時には、全てが遅かったと理解する瞬間だ。
彼らが荷物も捨て一心不乱に逃げたのは、目の前で白骨化と再生を繰り返すスケルトン、いやゾンビか?
明らかに異常なモンスターにいち早く気がついたからだろう。
普段から索敵を人任せにしていたツケが回ってきた。
今更愚痴ることも逃げることも出来ず、僕はレイピアを抜刀する。
この攻撃に意味は無いだろう。だが一矢報いてやりたかった。
息を整え、全力で肉薄し、切っ先が再生中の肉に刺さろうとした瞬間。
「助けて」
思わず寸止めした隙を付かれ、僕は右脇を抉られた勢いそのままに倒れる。
「カみざぁあぉあがぁああ」
人間の懇願する声が、ゾンビ特有の鳴き声に変貌する。
遠のく意識の中、僕は世界を騒がせた神託を思い出した。
『祈りなき世界の神はいずれ理を破壊する。あまねく生命よ、祈りを捧げよ』
.....僕らの願いは、祈りでは、なかったのか......
7/9/2025, 10:39:29 AM