寂しさ
はらり はらりと枯葉が落ちる
しんしんと 空気が 澄んで冷たい
ぽっかりと空いた丸い穴に一匹の子狐が
自分の毛皮に包まって 一時凌ぎの暖を
取りながら 親狐の帰りを 今か 今かと
待っていた。
(絶対に 此処から動いてはいけないよ)
そう言い聞かせた 親狐との
約束を守って....
(父さん 母さん 寂しいよ... 早く帰って来て....)
不安に打ち震えながら 涙を目元に
零しながら 二匹の暖かな 笑顔を
想像して・・・
二匹の親狐に 自分が呼ばれるのを
冷たい風の音を聞きながら 必死に
待っていた。
その内に微かな音が 子狐の耳に届いた。
「坊や!」その声に反応し 子狐は、
耳をそばだてる。
近くまで二匹が来ている。
それは、分かる
けどまだ 駆け出しては、いけない....
二匹の親狐が 自分が居る 穴の側に
寄るまでは....
「坊や!」二匹の狐のシルエットが見えた。
その瞬間 子狐は、脱兎の如く駆け出した
「父さん 母さん!!」
「遅くなってすまなかったね!」
三匹は、抱擁をする様に寄り添う
「ううん...良いの だって...」子狐は、
安堵の余り その続きの言葉を
紡げない....
「さあ早く 穴の中に入ろう!」
親狐は、そんな子狐を暖かな穴の中に
誘う 「うん!!」子狐は、安心した様に
頷く。
だって 絶対帰って来てくれるなら
僕は、寂しくても 何度だって待てるから...
父さん 母さんの笑顔を待てるから...
だから 寂しさなんて怖くない...
父さん母さんが 抱きしめて迎えてくれる
事を知っているから...
いつも僕の為に 大変な思いをして
食事を取って来てくれる
父さん母さんの 苦労に比べたら
寂しさなんてへっちゃらだから...
12/19/2023, 11:58:49 PM