→短編・君と、休日のひととき。
君にせがまれて、シャボン玉遊び。2歳のお誕生日にジィジからもらったプレゼント。
シャボン液を用意する段階から君は大はしゃぎ。洗面台に届かない背丈を一生懸命に伸ばして、僕の手元を覗き見ようとする。
見下ろす君の小さな頭に天使の輪っかが、ゆらゆら揺れる。好奇心旺盛な天使は、いっときもじっとしていない。
さぁ、庭へ出よう。晴天の昼間。君のはしゃぐ声が、青い空に吸い込まれてゆく。
先を花のように開いたストローにシャボン液を浸して、そっと息を吹き込むとシャボン玉がホワリ。大きな、小さな、シャボン玉をいくつも空へと解き放つ。
シャボン玉初体験の君は、目を輝かせて手を伸ばしシャボン玉を追う。
シャボン玉の薄い膜に、虹が揺らめく。君の瞳にこの光景はどう映っているのだろう? いつかこの日を思い出すことはあるのかな? シャボンの虹、覚えていてほしいな。
ーパチン!
力いっぱい手を打って、君がシャボン玉を捕まえた。得意満面に手を開くが、そこには何もない。シャボン玉の名残が君の手を濡らすばかり。
君は両手を何度も見て、僕にその手を見せる。
「ないねぇ」
不思議そうにそんなことを言う君の頬に、虹色のシャボン玉が擦り寄るように通って行った。
テーマ; 君と見た虹
2/23/2025, 8:51:49 AM