七海

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『旅路の果てに』(ちょっとエッチな描写あるので注意)


事の発端は、商店街のくじ引き。3等にあった米3キロを求めてケンがガラガラを回した結果、何と1等が当たった。
内容は1泊2日の温泉旅行。
ペアで行けると分かり、何気なく彼女_アキ_を誘った。
彼女はインドア派だから断られると思っていた、のだか、

「行きます!行きたいです!」
と食い気味に言われ、あっという間に準備をすると、2人で旅行へ出かけた。

2人で館内を循環し温泉まで時間を潰す。
夜になり、それぞれ露天風呂に入っていく。

「あ"ー………気持ちいいな………」
「星綺麗………」

風呂から出た後は食べた事無い豪華なご飯に舌鼓みを打つ。

「おいしいですね」
「背徳感の味がする………!」
「合法ですから大丈夫ですよ」


そうしてあっという間に夜を迎える。


「今日は楽しかったですね、ケンさん」
「そうですね」


敷布団の上でゴロリと横になるアキをチラリと一瞥すると、ケンは机の上にパソコンを開く。

「え、なんですかそれ」

「別に仕事はしませんよ。今さっき会社から資料を数日以内に送るよう連絡が来たので、その資料をメールで送るだけです」

「別に今じゃなくても良いじゃないですか」

「こういうのは今終わらせたほうが楽なんですよ」

「ていうか何でパソコン持ってきてるんですか」

「念の為ですよ念の為。とにかく数分で終わりますのでちょっと待っててください」

そう言いながらケンはパソコンに向かう。
静かな部屋に、タイピング音とマウスのクリック音が響く。
そうしてメールが送られた事を確認すると、ふぅ、と息を吐きパソコンを閉じた。

「終わりましたよアキさん………アキさん?」

見るとアキは布団にくるまり横になって後ろを向いていた。

「私より仕事を優先ですか。そうですか」

「だから仕事ではないですって」

「私にとっては仕事と一緒です。2人きりで旅行行けるから行きたいって私言ったんですよ。今日はめんどくさい女スイッチオンです」

「それ自分で言うものじゃないと思います」

けれど2人の旅行に私用を持ち込んでしまった自分も悪いのかもしれない。

「なんでもしますから機嫌治してください」
「なんでも?今何でもって言いました?」

ミノムシ状態を解除し、ガバッと起き上がり体をこちらに向ける。
あ、しまったと思った時にはもう遅く。


「じゃあ、私の処女、貰ってください」

そう、アキは言った。

「………なんでそうなるんですか」
「なんでもするって言ったのはケンさんですよ」
「いや言いましたけどそれとこれとは話が」
「ナヨナヨした男は嫌われますよ」
「別にナヨナヨしてる訳では」
「男見せてください」
「………」
「もしかして避妊具の心配ですか。それなら私が」

用意してます。そう言おうとした言葉は、布団に押し倒されることによって掻き消された。

「ケン、さん」
「………そんな事を言っていると、悪い人間に襲われてしまいますよ」
 

こんな風に。そう言うとケンはアキに口付けた。

「ん、ぁむ、んん」

舌を絡ませ、ねっとりと口内を犯していく。
アキの体から力が抜けるまでキスを続けると、ようやく口を離した。

「ケン、さ………」

本当に抱かれる。
そう感じた瞬間、アキの心臓がドッと脈を打つ。
恥ずかしさと、見た事のないケンの顔をみてドキドキが止まらない。
思わず目をギュッと瞑る。
しかし次にきたのは、頭を撫でられる感覚だけ。
そろりと目を開けると、優しそうに頭を撫でてくるケンの姿が目に入った。

「顔赤いですよ」
「あ、え」
「流石に抱きませんよ、今は」
「いま、は?」
「性行為と言うものはお互い準備ができたらするものです。心の準備、できてないじゃないですか。それに君はまだ若い。なので」

心の準備も完璧で、本当に抱かれたいと思った時は、抱いてあげます。

そう耳元で囁くと、「さあ、明日早いから寝ますよ」と笑いながら布団に戻っていった。

(ずるい、大人だ……)
そう思いながらも、アキはさっきまでの行為と、ケンの顔が忘れられず、ドキドキが止まらなかった。


翌朝。2人は何事も無かったかのように旅館を後にし帰路についた。
私たちの関係はどう変わるかはまだ分からないけれど。
この日は一生忘れられないだろう。そう、アキは思った。


終わり

2/1/2024, 2:54:46 AM