えだまめ

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もう何時間経った…?妻が特別室に入ってからしばらくたった。

今日、仕事をしていたら、妻が、入院している病院から電話がかかってきた。「陣痛が始まったからすぐに来てほしい」と。俺は急いで上司に事情を説明し、病院に来た。俺が来たときにはもう妻は特別室の中だった。

スマホを見る。もう0時を回っていた。
「頼む。無事に産まれてくれ…」
さっきから何度も呟いている。喉もカラカラだ。だが、飲み物を買いに行く気にもなれない。もし俺がいない間になにかあったら、もし俺がいない間に産まれたら。そう考えるととても動く気になれない。
「頼む…頼む…!」
その時

「ほんぎゃーほんぎゃぁあああ」

一瞬、時間が止まった気がした。産まれた…産まれたのか…?特別室の扉が開き、助産師が出てくる。
「お父さん…産まれましたよ。元気な男の子です」
涙が出てきた。案内され、特別室の中に入る。ベッドの上には、産まれたばかりの赤ちゃんを抱いた妻がいた。
「あなた…産まれたの…産まれたのよ…!」
「あぁ…本当に…」
産まれたばかりの赤ちゃんは小さく、でも確かに生きていた。
「良かった…本当に良かった…」
これほどまでに特別な夜はあるだろうか。そう思えるほどだった。

外は雪が降っていた。産まれたばかりの赤ちゃんを囲み、夫婦は涙を流し笑っていた。

1/21/2024, 2:59:15 PM