見知らぬ長い金髪の女性が、私の前に、魔物の視界から遮るように現れた。
「大丈夫。」
凛とした声で彼女はそう言い、槍を構えた。
急に現れた彼女に対して、魔物は魔法攻撃を繰り出す。空気が震えるような感覚に、先程まで私を襲っていた魔法とは桁違いの威力であることがわかる。恐怖に私は震え上がる。
「へぇ…ちゃんと私の強さを読めるんだ。」
彼女はそう感心したように言った。
「でも、判断を間違えたね。」
彼女は槍を振るった。
何が起きたのかわからなかった。ゆっくりと顔を上げてみれば、魔物は姿形もなく消えていた。
「た、助かった?」
彼女は私に寄ってくる。
「もう大丈夫。魔物はもういないよ。怪我はない?」
彼女は手を差し伸べてくる。
「お、お姉さん、何者?」
「旅人。」
「どうやって、倒したの?」
「強化魔法。」
「!」
私は彼女を警戒する。魔法は恐ろしいものだ。村を魔法使いの役人に奪われ、隣町への旅路で家族は魔物に殺された。
「どうかした?」
「お姉さん、魔法使いなの?」
「そうだね。…魔法が怖い?」
私が警戒していることに気づいていないはずがない。相当な魔法使いなことは、さっきの一瞬でわかっている。それなのに、彼女は終始穏やかだ。
「怖くない。怖いんじゃなくて、嫌い。嫌だ。」
私の全てを奪って、私自身を奪おうとした魔法なんて、大嫌いだ。
「そっか。」
彼女は、自分の武器を嫌と言われたのに、何ともないようにうなずいた。
「『怪我を治す魔法』。」
彼女がそう言った瞬間、私は体が軽くなった気がした。彼女を見れば、にこりと笑った。
「これも、魔法なんだ。便利でしょ?」
「…。」
私は何も言えなかった。
「ここは魔物の縄張りだから、とりあえず森を出ようか。」
私はうなずいた。彼女は手を差し伸べてくる。私はその手をとった。
「ねぇ。」
「なに?」
「魔法って…何なの?」
「なんだろうね。私は、人によって解釈は変わるとは思うよ。」
「…私は、魔法に全てを奪われた。」
「そう。」
彼女は私の話なんて興味なさそうだった。だから、すーっと言葉が出てきた。
「でも、お姉さんの、魔法に救われた。」
「そうだね。」
「魔法は、嫌いだと思ってたけど…魔法がなんなのか、知らないだけだった。」
「そっか。」
「お姉さん、私に魔法を教えてください。」
彼女は穏やかに微笑んだ。
2/23/2025, 12:40:02 PM