はた織

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 長き残暑を終えて、ようやく秋になって落ち着いた頃だ。
 図書館の中で、高齢の女性が楓の落ち葉を持っていた。近所に住む子どもたちが、よく小さな花や青い柿の実、落ち葉に枯れ枝などを持ってやってくる。子どもたちの無垢な笑い声と共に四季折々の風が吹く。長年たまった貴き埃の重みに耐えている書物も軽やかに頁を開く。その風を幼心がある老婆もそよそよと優しく流しているのだ。
 植物と手を繋ぐ姿は神々しく見える。植物にも宿る八百万の神の手を引いて共に歩むから自然と輝くのだろう。
 土だの塵だの足跡があるだのと言い訳をして、自然の落とし物を拾わない私の心には鬼が棲みついている。石も一緒に手を繋ぎたいと誘っているではないか。
 私は、数億年の空気と生死と記憶の重みに耐えた石を拾い上げて握りしめる。肌に食い込むその硬さをもって、心の鬼を斬る心の刀になっておくれ。一生手を繋ぎましょう。
               (250320 手を繋いで)

3/20/2025, 12:53:06 PM