小絲さなこ

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「一度は言ってみたい台詞」


「ここは俺に任せて、お前は先に行け。俺は後から行く」
「それ死亡フラグじゃねーか」
「いや、でも一度は言ってみたい台詞っていったらこれだろ」
「まあ、言ったらフラグ立つしな」
「安心しろ。峰打ちだ」
「またシチュエーションが限られる台詞きたぞ」
「俺に惚れちゃ火傷するぜ、子猫ちゃん」
「うわぁ……」
「言ってみたくね?」
「うーん……」
「言いたいかどうかはともかく、ポーズ取って言ってるの見ると、こう……」
「痛いな」
「あ、言っちゃったよこいつ」

くだらないことを駄弁りながら、のろのろと住宅地を歩く。
四人の影が伸びていて、日の入りの時間が近づいているのだと実感する。

「そういえばさぁ……この『子猫ちゃん』って、俺マジで動物の子猫のことだと思ってたんだよねー」
「なんで!」
「いや、猫アレルギーの人が言ってる台詞なのかと」
「猫っぽい気まぐれな女のこと言ってるんじゃねーの?」
「いや、性の対象としてみている女性の比喩らしいぞ」
「マジか。考えようによってはクズいな」
「だよなぁ……やっぱり一度は言ってみたい」
呆れたような目やゴミを見るような目で見られた。解せぬ。



────子猫

11/16/2024, 7:12:30 AM