『現実逃避』
幹也はPCを閉じる。空港に向かわなければならないギリギリの時間まで、結局オフィスに残ってしまった。
これから日本に帰国して一ヶ月は今のプロジェクトに手を付けられないのだから、最後まで粘るのは当然のことだろう。そう自分でも思っていたが、朝日が登ってきた窓を見て、自嘲の笑みがこぼれた。
「これが現実逃避とは、悲しいものだな」
どうせ気が乗らない帰省なら、腹いせに思いっきり遊び倒せばよかったのに。
まったく、義務感というのは麻酔である。
結局自分は嫌がりながらもその麻酔に頼りきりなのだ。きっと。
2/27/2024, 11:33:31 AM