マグカップに氷をどっさり詰めて、アイスコーヒーでも茶でも入れると、カップの表面に水滴の汗がビッチャァな季節となりました。
ぶっちゃけマグよりスープカップを使っている派閥の物書きから、こんなおはなしをお届けします。
「ここ」ではないどこかの世界に、「世界線管理局」という厨二ふぁんたじー組織がありまして、
そこの業務は世界同士の渡航航路を開設したり、
世界間で揉め事が起こった際の調停役だったり、
他にも、滅んだ世界のチートアイテムが他の世界に悪さをしないように、収容して、保管したり。
その世界が「その世界」として、どこからも干渉されず、侵略もされず、「その世界」として在り続けて「その世界」として終われるように、
いろんな仕事を、しておったのでした。
さて。そんな「世界線管理局」なので、当然滅んだ世界から諸事情でこぼれ落ちた難民を収容する、
三食おやつ付き、娯楽施設と海山完備、
6個の季節アルゴリズムによって本物の植物が生き物とたわむれる、難民シェルターがあります。
今は6個の季節の中の、東京でいう6〜7月頃。
難民のひとつのグループが余暇に始めた田畑は、雲麦や星稲の苗が大きく育って、
そのグループの難民に、かつて在った滅亡世界の思い出を提供しています。
麦はそろそろ収穫の時期。きっと、どっさり実って、たくさんのパンとなり、うどんとなり、干し麦以下略となることでしょう。
ここからがお題回収。
この難民シェルター、時折原っぱだの林だの、
ともかく自然ゆたかなどこかで、1匹のドラゴンが、ぐぅすぴ、昼寝しておることがありまして。
『んん。むにゃむにゃ』
その日も火と雷と光のドラゴンは、ちょっと曇った天候ながら、時折人工太陽の光もさしますので、
ぐぅすぴ、かぁすぴ、ヘソ天しておりました。
『もう、飲めん、これ以上、飲めん……』
夢の中のドラゴンは、大きなマグカップに大量のミックスナッツのミルクを入れられて、
ペロペロ、じゃぶじゃぶ、飲まされておりました。
それにしても大きなマグカップです。
ドラゴンが顔を突っ込んで、舌を入れてミルクをすくい飲んでも、全然無くならないのです。
『さぁ、頑張って、頑張って』
ドラゴンの夢の中では、とても悪い顔をしたハムスターの5〜6匹が、なにやらメモをしたり、マグカップの水位を計測したり。
『すべては■■様のためだよ。■■様に、◯キロリットル以上のマグカップを献上するためだ』
リットル。キロリットルのマグカップですって。
夢の中はだいたいトンデモ設定が横行するものですが、それにしたって、キロリットルですって。
程度というものがあるでしょう。
でも、これは夢の中なので、しゃーないのです。
『おい、何故ナッツミルクなんだ、どうして■■じゃなく、俺が全部、飲まなきゃならないんだ』
夢の中のドラゴンは、もう何回ミルクをぺろんちょしたか分かりません。
何回も何回もマグカップに舌を突っ込んで、何回も何回もナッツミルクをすくって、
でもマグカップの中身は減らないのです。
でもマグカップの底は見えないのです。
夢なので、しゃーない。
『さぁ、頑張って、頑張って』
夢の中のハムズは、最初の言葉を繰り返すばかり。
『すべては■■様のためだよ』
難民シェルターでお昼寝中のドラゴンは、夢の中で延々マグカップに顔を突っ込んで、
そして、夢からさめたその時は、
寝ぼけて、夢と現実の境界が曖昧で、
十数秒、「何故突然目の前のマグカップが消えたのか」、ずっと考えておったとさ。
6/16/2025, 5:04:54 AM