のねむ

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夜明け前、私はふと目を覚ました。
君の声が聞こえた気がしたから。もしかしたら、それは夢の中で聞いた君の声だったのかもしれない。
けれど、どこか懐かしくて寂しくて、なぜだかムカムカしてしまったから一言怒鳴ってやろうと口を開いた。そしたら、間違えて目を開いてしまったみたいだ。起きなければ良かった。
ずっと寝ていたら、まだ君の声を聞けたかもしれないのに。

君が消えてから、私は後悔ばかりしている。
きっと、意味が無いのに君と再会できた日のことを考えて、涙ばかり流す練習をしている。
さよならの無い別れ方は確かに希望を持てるけれど、何度も新しい季節を受け入れる度に、絶望が降り積もる。馬鹿みたいだ。明確な別れがないと諦めがつかないような人間からすれば、生き地獄のようで。ただただ、また会えるかも、明日はきっと、明後日はきっと、そんな独り言をずっと心の中で呟いている。
私は、きっと君が好きだ。
恋とか、愛とかそんな言葉で片付けれる様な感じではなくて、もっと曖昧で矛盾を沢山含んでいて、台本もなく結末も決まっていないような1人芝居をしている間抜けな感じなのだ。
君は、人からの好意を受け取れないといった。逃げたくなると。だから、私から逃げたのだろうか。もし、私が好きと言葉にしなければ、君を生きる理由にしていると、言わなければまだ君はここに居たかもしれなのに。
そんな後悔ばかりを散り積もらせて、私は毎日布団へ潜る。

夢は好きだ。過去の君に会えるから。
私の夢は、視覚も聴覚も痛覚も現実と同じようで、見る景色も聞こえる音も、人に刺された時の痛みでさえも鮮明に明確に見せてくれる。
君が居なくなった日のことも、君が私の前にまた現れてくれるようなことも、何度も夢の中で見たけれど、やっぱり慣れることはなくてただただ苦しかった。
だから、今日聞いた君の声は、何処か過去で見たいつもの君のようだったから、懐かしくて仕方がなかった。
夢から覚めなければいい。何度も心に言い聞かせて眠っては見たが、望んでいない憂鬱な朝ばかりきてしまう。
神様は意地悪だ。そして、こんな時ばかり神様の存在を思い出す私も多分きっと意地悪だ。





君は、今も元気でしているだろうか。
ちゃんとご飯を食べているだろうか。あの綺麗な、桜の森の木の下で、三味線を弾き、長い髪の毛を纏め、目に移る全ての人の幸福を願っているのだろうか。
どうか、私のこの重い思いが、貴方を苦しめていませんように。それだけを祈って、私はまた目を閉じた。





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おやすみなさい。きっと、貴方も良い夢を見てるよ。

9/13/2023, 1:36:45 PM