―――あなたでよかった、あなたでよかったの
これはたぶんトゥルーエンドなのかもしれない。この前はもっと悲惨だったし、その前はとても平和だった。
この光景もなかなかに悲惨ではあるが最小限の被害で済んだから結果オーライ。この物語にはみんなが幸せになれるルートは存在しない。誰を救うのか、切り捨てるのか、選択を迫られるのだ。
この物語の主人公は母と娘の2人。生まれてすぐ攫われた娘を探し出すのが母の役目で、娘は攫った犯人と実母のどちらかを選ぶのが役目。信頼関係も家族としての情も何もかもがゼロかマイナスからはじまる。
1つの選択で、悪を滅ぼし大団円となるか、母娘で殺し合うか、周りを巻き込んで破滅するか。他にもあるけどどのエンディングも誰かの犠牲の上に成り立っている。
今回は母が娘を殺し、必ず悪を滅ぼすことを決意するエンディングだった。血まみれの母娘と何も言えない周りの人、居心地の悪い静けさだけが部屋を満たしていた。
――そうだね、ヒロインはその娘でよかった
だって、また私が殺されたら嫌だからね
「ごめんね、お姉ちゃん」
代わりに死んでくれてありがとう、なんて言えないよ。
【題:静寂に包まれた部屋】
9/29/2024, 12:51:03 PM