与太ガラス

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「お仕事は何をしてるんですか?」

 合コンなんかで聞かれたときは、こう返すようにしている。

「僕は太陽の下で働いています」

 するとだいたい仲間からは

「なにカッコつけてんだよ。現場で仕事してるだけだろ」

 とツッコミが入る。そう、僕は建設現場で働いている。でも、太陽の下で働くということに僕は強い思いを持っていた。


「おめぇまた泥棒しやがったな、チクショウ。まだガキだから盗ったもん置いてったら許してやる。早く出せ」

 僕は幼い頃から貧乏で、腹を空かせてはよくスーパーで盗みを働いていた。見つかっては叱られるを繰り返していたけど、スーパーのオヤジさんの言葉は耳に届かなかった。

「いいか、いつだってお天道さまは見てるんだ。お天道さまから目を背けなきゃいけねぇような生き方はやめろよ」

 仕方ないじゃないか、お金がないんだから。ずっとそう思っていた。そしてあるとき、僕は大変なことをしでかして、少年院に送られることになった。

 僕を引き取りに来たのは、親ではなくスーパーのオヤジだった。それからオヤジさん夫婦は僕のことを辛抱強く育ててくれた。

 いつも「お天道さまの下で働けるようになれ」と家訓のように言っていた。だからいま、その仕事ができているのがただ誇らしいんだ。


「ねえ、この後も飲みに行かない。夜中までやってるお店知ってるから」

 合コンの終わり際、相手側の人に誘われた。

「いや、遠慮しときます。お天道さまの見えないところに行くわけにはいかないので」

11/26/2024, 2:43:17 AM