川柳えむ

Open App

 一緒にいたのは愛情というより同情だった。
 辛い過去を曝け出してくれた君を、守ってあげたいと思った。
 だから、君のわがままを何でも聞いてあげた。すぐ泣き出してしまうのも仕方ないと思ったし、怒るのはきっと俺に心を許してくれているから。

 ……ちょっと疲れた。
 幼馴染みで腐れ縁の女友達に弱音を吐いた。怒られた。それは彼女の為にならないと。
 同情はいいが、わがままを全て聞いてあげるのは間違っている。

 彼女と少し話すことにした。
 家に帰ると、彼女は包丁を持って立っていた。「どこに行ってたの?」
 ――今、一番同情してほしいのは俺の方かも。


『同情』

2/20/2024, 10:34:58 PM